「旬」をむすぶ、「おにぎり」
行楽のお供にぴったりなのが「おにぎり」だ。炊いた米で具を包み、食べやすい大きさに握ったおにぎりは、携行しやすいのが特徴。日本のソウルフードとも呼ばれ、家庭だけでなく、コンビニエンスストアや居酒屋のメニューにもならび、たくさんの人に親しまれている。
おにぎりの具材はさまざまだが、「実りの秋」とも呼ばれるこの季節、せっかくなので旬の味覚を味わいたいもの。そこで、SHUN GATE編集部が、秋の旬食材を使ったとっておきのおにぎりを考案。是非トライしてほしい。
「美味しいおにぎり」に欠かせない海苔
おにぎりのイメージは三角や俵など形はさまざまだが、共通しているのは海苔で巻かれたその姿。全面をまんべんなく包んだり、一部をはさんだり、巻き方はさまざまだが、「美味しいおにぎり」にとって、海苔は欠かせない存在だ。
そこで、海苔の魅力を探るべく、創業以来、海苔ひとすじ165年という日本橋の老舗「山本海苔店」取締役、山本貴大さんにお話を伺った。
「おにぎり」と「海苔」の出会い
「おにぎり」と「海苔」はいつから一緒に食べられるようになったのだろうか。「海苔は日本古来の食べ物で、古代から貝や魚と同じように食べられていました。飛鳥時代に制定された大宝律令では、米や麦などと一緒に納める税金の一つとして文献にも登場します。江戸時代に入り、東京湾で採れた海苔を浅草和紙の製紙技術を用いて加工したところから、初めて紙状になったと言われています。紙状の海苔はごはんに巻きやすいのと、江戸で急速に発展した寿司屋台で食べられ始めたのがきっかけではないでしょうか」と山本さん。
食材の美味しさを惹き立てる「海苔」の魅力
紙状になったことで流通しやすくなるだけでなく、食べ方のバリエーションも増えたという。「海苔はご飯に限らず、あらゆる食材とマッチする無限の可能性を秘めています。海苔は三大うまみ成分が揃っている唯一天然の食品です。鰹節や煮干しに含まれるイノシン酸、昆布に含まれるグルタミン酸、しいたけに含まれるグアニル酸、この3つのうち1つでも含まれていれば“美味しい”と感じるのですが、海苔には3つ全て含まれている。だから、それだけで食べても美味しいですし、どんな食材にも合う、海苔はうまみの宝庫なんです」と力強く語ってくれた。
海苔の「旬」とは
日本人の食生活に深く浸透し、1年を通して食べられる海苔だが、「旬」はあるのだろうか。「海苔は11月下旬から3月までの間しか採れません。海苔のタネが貝に付着し、そこから伸びて成長するのですが、伸びれば伸びるほど固くなり、味が落ちるとされ、11月下旬に採れる初摘みと呼ばれる海苔が、非常に柔らかい最高品質のものになります。そして、海苔はなんといっても焼きたてが一番。口に入れた瞬間ほろっと溶け、口のなかでうまみが一気に広がります。柔らかい海苔はおにぎりにもぴったりですね。海苔は水分に触れるとうまみが流れ出てしまうので、おにぎりを包む海苔も巻きたてが一番美味しいです」。
「旬」にこだわる海苔作り
日本の海苔と海外の海苔の違いは、柔らかい初摘みの海苔を「旬」とする日本独特の食文化にあるという。さらに山本海苔店では、若い海苔にこだわるだけでなく、出荷前の商品を熟練の検査員がすべて口で確かめ、見た目と味のチェックを厳しくおこなっている。「手間ひまをかけて作られた海苔の美味しさは、他ではなかなか味わえません。特に栄養豊富な有明海で採れる海苔は格別です。日本の海苔はあまり海外に流通しないので、外国人の方に食べてもらうとびっくりされますよ」と山本さん。
SHUN GATEでは、海苔の「旬」を迎える11月に、有明海を取材予定だ。柔らかく、風味豊な海苔がどのようにして生まれるのか、美味しい海苔作りの秘密にせまるので、乞うご期待!