飛騨の人々の生活と風土を伝える、飛騨紅かぶの「赤かぶら漬」
飛騨山味屋「赤かぶら漬」について、おすすめポイントを紹介しよう。
地場の品種「飛騨紅かぶ」にこだわる
さまざまな品種の赤かぶがあるなかで、飛騨山味屋が使うのは地元の伝統野菜「飛騨紅かぶ」のみ。水分保有量や糖度が高く、昔ながらの美味しさに仕上がる。
塩だけで乳酸発酵させる昔ながらの製法
余計なものは加えず、塩だけで低温でじっくりと熟成・発酵させる「赤かぶら漬」。乳酸菌の力で深い旨味と酸味が醸し出される。
出荷量1位。地元で一番愛されている味
飛騨高山にいくつかある漬物店の中で、出荷量第1位を誇る飛騨山味屋。どこのスーパーやお土産物店にも並ぶ、地元民お墨付きの「赤かぶら漬」だ。
厳しい冬を越すために育まれた漬物文化
日本各地に存在する漬物文化。雪深い飛騨高山では、生鮮野菜が手に入らない冬の間の保存食として重宝されてきた。「昔は各家庭で漬けていて、毎日食卓にのぼっていた」と話すのは、飛騨山味屋の長岡克治さん。寒さで凍った白菜の漬物を、卵と一緒に焼いて食べたことから生まれた郷土料理「漬物ステーキ」など、ユニークな食文化も残っている。
「赤かぶら漬」は皮の赤いかぶを乳酸発酵させて作る、飛騨高山ならではの漬物だ。飛騨山味屋は昔ながらの味に仕上げるため、地元発祥の品種・「飛騨紅かぶ」だけを使うことにこだわる。
「水分や糖度が高く、ほかの品種の赤かぶと比べて比較的柔らかいです。塩を加えて低温でじっくりと発酵・熟成させることで酸味と旨味が出て、皮の色素で全体がきれいな紅色に染まります」
塩だけで発酵・熟成させる飛騨山味屋の「赤かぶら漬」
「赤かぶら漬」をつくる工程はとてもシンプルだ。洗浄した赤かぶを高さ2.5mのタンクに入れて塩を加え、2〜3日間かけてまずは一次発酵させる。そのあと水分を絞ったら、さらに塩を加えて重石をのせて本漬け。室温3℃ほどに保たれた蔵の中で、3ヶ月から半年かけてじっくりと発酵・熟成させることで、深い旨味とふくよかな酸味が生まれる。
年間を通して「赤かぶら漬」を製造する飛騨山味屋だが、年末年始は一番の繁忙期。年の瀬の贈り物や、地元ではお正月の食卓にも「赤かぶら漬」が並ぶ。鮮やかな紅色は、晴れの日にもふさわしい華やかさ。また12月1日から年末にかけての期間限定で、樽から出した「赤かぶら漬」を熱処理せずに生のまま出荷する「蔵出し」シリーズも登場。収穫直後の新鮮な赤かぶの漬物が食べられるのはこの時期だけ。漬けあがったばかりの「赤かぶら漬」はみずみずしく、旨味もたっぷりだ。
「漬物の消費量は年々減少していますが、飛騨紅かぶと農家さん、地元の食文化を守るために、私たちは『赤かぶら漬』を作り続けていきたい。いつ食べても『懐かしい』と言っていただける、変わらない味でこれからもやっていきます」と長岡さん。「赤かぶら漬」は飛騨の風土と文化を語り継ぐ存在だ。