飛騨の人々の生活と風土を伝える、飛騨紅かぶの「赤かぶら漬」

飛騨山味屋「赤かぶら漬」
赤かぶら漬け
(取材月: November 2023)
< PACKAGE >
パッケージ
岐阜県の北部にあたる飛騨エリアは、3,000m級の山々に囲まれた山間高冷地。この地で暮らす人々が、厳しい冬を乗り越える食料として作っていたのが「赤かぶら漬」だ。1919年創業の地元の漬物店・飛騨山味屋は、飛騨紅かぶという品種にこだわり、昔ながらの製法でその味を守っている。今回は飛騨の風土が生んだ漬物「赤かぶら漬」をご紹介する。

飛騨山味屋「赤かぶら漬」について、おすすめポイントを紹介しよう。

地場の品種「飛騨紅かぶ」にこだわる

さまざまな品種の赤かぶがあるなかで、飛騨山味屋が使うのは地元の伝統野菜「飛騨紅かぶ」のみ。水分保有量や糖度が高く、昔ながらの美味しさに仕上がる。

塩だけで乳酸発酵させる昔ながらの製法

余計なものは加えず、塩だけで低温でじっくりと熟成・発酵させる「赤かぶら漬」。乳酸菌の力で深い旨味と酸味が醸し出される。

赤かぶら漬けの陳列

出荷量1位。地元で一番愛されている味

飛騨高山にいくつかある漬物店の中で、出荷量第1位を誇る飛騨山味屋。どこのスーパーやお土産物店にも並ぶ、地元民お墨付きの「赤かぶら漬」だ。

厳しい冬を越すために育まれた漬物文化

日本各地に存在する漬物文化。雪深い飛騨高山では、生鮮野菜が手に入らない冬の間の保存食として重宝されてきた。「昔は各家庭で漬けていて、毎日食卓にのぼっていた」と話すのは、飛騨山味屋の長岡克治さん。寒さで凍った白菜の漬物を、卵と一緒に焼いて食べたことから生まれた郷土料理「漬物ステーキ」など、ユニークな食文化も残っている。

赤かぶ

「赤かぶら漬」は皮の赤いかぶを乳酸発酵させて作る、飛騨高山ならではの漬物だ。飛騨山味屋は昔ながらの味に仕上げるため、地元発祥の品種・「飛騨紅かぶ」だけを使うことにこだわる。

「水分や糖度が高く、ほかの品種の赤かぶと比べて比較的柔らかいです。塩を加えて低温でじっくりと発酵・熟成させることで酸味と旨味が出て、皮の色素で全体がきれいな紅色に染まります」

塩だけで発酵・熟成させる飛騨山味屋の「赤かぶら漬」

赤かぶを漬けている様子

「赤かぶら漬」をつくる工程はとてもシンプルだ。洗浄した赤かぶを高さ2.5mのタンクに入れて塩を加え、2〜3日間かけてまずは一次発酵させる。そのあと水分を絞ったら、さらに塩を加えて重石をのせて本漬け。室温3℃ほどに保たれた蔵の中で、3ヶ月から半年かけてじっくりと発酵・熟成させることで、深い旨味とふくよかな酸味が生まれる。

作業風景

年間を通して「赤かぶら漬」を製造する飛騨山味屋だが、年末年始は一番の繁忙期。年の瀬の贈り物や、地元ではお正月の食卓にも「赤かぶら漬」が並ぶ。鮮やかな紅色は、晴れの日にもふさわしい華やかさ。また12月1日から年末にかけての期間限定で、樽から出した「赤かぶら漬」を熱処理せずに生のまま出荷する「蔵出し」シリーズも登場。収穫直後の新鮮な赤かぶの漬物が食べられるのはこの時期だけ。漬けあがったばかりの「赤かぶら漬」はみずみずしく、旨味もたっぷりだ。

長岡さん

「漬物の消費量は年々減少していますが、飛騨紅かぶと農家さん、地元の食文化を守るために、私たちは『赤かぶら漬』を作り続けていきたい。いつ食べても『懐かしい』と言っていただける、変わらない味でこれからもやっていきます」と長岡さん。「赤かぶら漬」は飛騨の風土と文化を語り継ぐ存在だ。

Writer : ASAKO INOUE
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Photographer : YUTA SUZUKI

長岡屋(直営店)

所在地 岐阜県高山市本町1-45
定休日 元旦
営業時間 9:00-19:00
URL https://www.hida-yamamiya.com/

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

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