豊かな三陸の恵みを伝える、手仕事の味
そんな気仙沼で郷土料理として親しまれてきたのが、程よく脂の乗った三陸産さんまを使った、さんまの佃煮だ。
今回は、気仙沼で大正時代から商売を営む斉吉商店が、手仕事にこだわってつくるさんまの佃煮、「金のさんま」をご紹介する。
「金のさんま」について、贈り物としてのおすすめポイントを紹介しよう。
秘伝の返したれと佃煮に適した三陸産のさんま
「金のさんま」のおいしさの秘訣は、煮込む際に使用する「秘伝の返したれ」。商品を開発して以来、30年以上の間、継ぎ足しながら使われており、長年の旨みが詰まっている。
さんまは、脂が多すぎても少なくても不向きで、程よく脂の乗った三陸で水揚げされたさんまが原料としてとても大事だ。
骨まで柔らかく幅広い世代が食べやすい
「金のさんま」は、骨ごと柔らかくなるまでじっくりと煮込んでいるため、ふっくらとした食感だ。そのため、小さいお子さまからお年を召した方まで、幅広い年代の方が食べやすい。
港町気仙沼とともに歩む
斉吉商店は、今から100年程前の大正10年(1921年)に食料品店として気仙沼で創業した。
昭和25年(1950年)2代目の時代には、廻船問屋として、漁船の船員の手配や食料、備品の準備などの手配まで業務を拡大。その対価として漁果(漁業の成果)から取り分をいただきながら、気仙沼の漁業と共に歩んできた。
平成元年(1989年)には、食品部門を設立し、加工販売も始めるが、2011年に発生した東日本大震災で気仙沼の一帯は甚大な被害を受け、斉吉商店も工場をはじめ、店舗、本社など津波が押し寄せた。この時、斉吉商店の看板商品でもあった「金のさんま」づくりに欠かせない、「秘伝の返したれ」も津波で流されてしまった。一度はあきらめかけたが、その後、社員が瓦礫の山の中から奇跡的に見つけ出してくれたのだ。
「一日でも早くこのたれを使ってさんまを炊き、震災前より美味しくて、たくさんの人に元気になって喜んでいただかなくてはならない」という強い想いから、斉吉商店は震災直後から再建に向けて動き出した。
再建に当たっては、以前からやりたかった自社ブランド商品の製造・販売に事業を絞り、2011年7月より一部商品の製造を再開。現在では、工場と店舗も再開し、気仙沼の本店のほかに東京の日本橋三越にも常設店舗を構えている。
誰からも愛される味を目指して
斉吉商店では、「金のさんま」の他にも、新鮮な素材を、余計なものは使わずに丁寧な味付けで炊き上げた「純煮(すなおに)」シリーズや、鮮度を生かした海鮮丼などの商品も取り扱っている。
「看板商品である、『金のさんま』や『純煮』は煮るということに向き合ってきた斉吉の得意な分野の商品です。良いと思う材料を使って、手仕事を惜しまずつくるということにやりがいがあります」と、語るのは、斉吉商店の斉藤吉太郎さん。
もともと気仙沼の郷土料理だったさんまの佃煮だが、斉藤さんの祖母がつくるさんまの佃煮が美味しかったことから、そのレシピをもとに斉吉商店の商品開発メンバーが長い時間をかけて微調整や試作を繰り返し、「金のさんま」として商品化したという。
「万人に好まれる味というのは無いのかもしれませんが、開発時には、より多くの方のお口に合うように味の微調整や炊き方、工程の順序の確立に多くの時間を要しました。今でも毎年のように味を調整しています」。
食品工場では、工業的に製造する会社も多い中、斉吉商店では手仕事にこだわり、斉藤さんいわく、台所が大きくなったような工場で製造している。
「金のさんま」の贈り物としての人気を受け、手土産としても便利な常温で保存できる商品も開発されている。
「『ひとくち金のさんま』は、常温保存の商品をつくりたくて開発しました。常温でも日持ちがするように、加熱方法等を工夫して設計しています。持ち運びもしやすく、お土産などに使いやすい商品となっています」と、斉藤さん。かわいらしいパッケージで、ちょっとした贈り物にも最適だ。
最後に、「金のさんま」のおすすめの食べ方について伺った。
「まずは、炊きたてのご飯にのせていただくのが一番のおすすめです。そのほかにも、わさび、山椒、山椒の葉っぱ、大葉、生姜、白髪ねぎなどの季節の薬味と合わせてもおいしくお召し上がりいただけます。出汁と合わせてお茶漬けにして召し上がるのもこれからの時期にいいですね。薬味は特に季節ものなので、斉吉のお店でも“旬”の薬味と組み合わせて、季節を届けるということをとても大事にしていますし、お客さんも喜んでくださいます」。
さまざまな食材との相性もよいので、自宅用にお求めいただくのも嬉しいという斉藤さん。
「贈り物になさるときはご家族の食卓の楽しい時間の中に、また、ご自宅で召し上がる方にとっても、忙しいときに手軽に食べられる一品になればいいなと思います」。
気仙沼の豊かな海と、あたたかな手仕事によってうまれた「金のさんま」。ぜひ大切な人と共有してみてはいかがだろうか。