THE POWER OF SHUN(November 2014)

SHUN STYLE

四季を感じる和菓子文化

和菓子

古来より日本人は、季節の移ろいに心を動かされ、その豊かな感受性をもとに、日本独特の文化を発展させてきた。春の訪れを待ちわび、夏の夜にそよそよと吹く風を心地よく思う気持ちが、俳句や短歌に巧みに織り込まれているように、はかなく過ぎていく季節ごとの美しい情景を、さまざまな形で表現してきた。食の世界においても同様であり、四季折々の自然や季節感のある日本の風情を良く表しているのが、和菓子だ。

和菓子とは、豆、穀類、果実などをベースに、甘味の砂糖や水飴を加えた日本独特の製法で作られた菓子。桜の時期には桜餅、夏には水ようかん、秋から冬にかけては栗を使ったお菓子など、季節にちなんだ和菓子が多くある。また、お茶席には欠かせない「生菓子」は、意匠を凝らした色や形で季節感を表現したものが多く、その姿は「五感の芸術」とも呼ばれるほど美しい。和菓子店に並ぶお菓子たちは、このように1年を通して彩り豊かに移り変わり、日本の四季を表している。そこで、我々は、四季を感じられる和菓子を探しに天保5年(1834年)創業の老舗和菓子店「花園万頭」を訪ねた。

昔ながらの製法で“旬”の味覚を表現

「花園万頭」の源流は茶道の盛んな金沢で「石川屋本舗」として始まった。昭和5年(1930年)に現在の本社所在地である新宿三光町(現在の新宿5丁目)に店を移したときに、近隣にある新宿の鎮守・「花園神社」の名と、古来より試行錯誤の末に完成させた「万頭」の名に因み、屋号を「花園万頭」に改め、今に至る。
「花園万頭」では銘菓「ぬれ甘なつと」をはじめ、社名にもなっている「花園万頭」など、さまざまな和菓子を販売している。「花園万頭」の秋の和菓子について、代表取締役社長の石川一弥さんにお話を伺った。

石川さん写真

「『花園万頭』の秋の和菓子といえば『粒寄せ』です。この『粒寄せ』は秋の“旬”である素材を多く使った和菓子の詰合せです。渋皮つきの大きな栗がまるごと入った『一粒渋皮くりなつと』、栗の色鮮やかな黄色が美しい『みめぐり』、9月から11月に“旬”を迎える北海道産の黒豆を使った『黒まめ甘なつと』、そして看板メニューの『ぬれ甘なつと』が入っています。『ぬれ甘なつと』の製法を用い、素材本来の風味とグラニュー糖のほどよい甘味を絶妙に組み合わせた、“旬”の素材の美味しさを存分に味わっていただける一品です」と石川さん。

粒寄せ写真

「ぬれ甘なつと」の製法には独自の技術があるのだという。「一般的に、豆は煮込むと皮がやわらかくなり、はがれてしまいます。豆の形そのままを、皮を含めて残すというのが、実はすごく大変です。また、ほんのりと素朴な甘さになるよう、4日間という長い時間をかけて職人が丁寧に蜜漬けを行うという、昔と変わらぬ製法を続けています。一つひとつ、ふっくらと炊きあげ、仕上がりにツヤを出すには、この手間ひまが大事なのです」。
繊細な技術が必要とされる和菓子。「花園万頭」がつくりだす和菓子には、長年培ってきた技術に裏打ちされた、確かな自信を感じた。

ぬれ甘なつと写真

こだわりの餡を使った「東京あんプリン」

そして、「花園万頭」には、「あんこ」と「プリン」という和洋折衷の意外な組み合わせが人気を呼んでいる「東京あんプリン」という和菓子がある。
石川さんいわく、ここにも昔ながらのこだわりが隠されているという。「和菓子の命でもある餡に使用する小豆は、黒豆と同じく9月から11月が“旬”で、今がまさに美味しい時期です。『花園万頭』の餡は、国産の小豆を使った自家製餡にこだわっています。昔は工場と住居が一体になっていたため、豆を炊くときの風味や香りに常に触れ、微妙な違いを感じていたと言われています。今では工場と住居は別になってしまいましたが、毎日餡作りに携わっていると、固さや色合いを見たら状態は大体わかるものです」
こだわりの自家製餡とプリンの出会いは、石川さんのひらめきからだったというが、完成には 6〜7年の時間を費やしたという。「卵と小豆は菌の問題があり、賞味期限がどうしても短くなってしまうため試行錯誤しました。いまでは常温で保存でき、しかも2ヶ月間美味しく食べることができるので、海外からのお客様もお土産として買っていかれることもあります」
実際に食べてみると、濃厚なカスタードプリンの甘さと、こだわりの餡の控えめな甘さがお互いを引き立て合いながら口の中で融和する上品な一品であり、多くの人に愛される理由がわかる。

東京あんプリン写真

同じ素材で、色や形を変えて表現するのが和菓子の面白いところだが、「花園万頭」では、さらに新しいエッセンスを加えている。「伝統的な製法は守りつつも、常に新しいことにチャレンジしていきたい。なんでもまずやってみないとわからない、というのが性分なんです。特にこれからは、和菓子の味に慣れていない欧米の方にも食べていただけるようなアイデアも必要だと思います」と石川さん。
和菓子にあまり馴染みがない、という方のために楽しみ方をたずねると、「和菓子は日本茶と一緒に育ってきた文化です。和菓子だけ食べるのではなく、ぜひお茶と一緒に楽しんでいただきたい。作法は難しいですが、まずは日本の文化に触れるつもりで、トライしてみてはいかがでしょうか」とのこと。
日本の風情を五感で味わうことのできる和菓子は、まさに日本の技術と伝統とがつくりだした世界に誇るべき食文化といえるだろう。

石川さん写真

都会のやすらぎ「花園茶寮」

日本を代表する都市である東京、新宿に「花園万頭新宿本店」はある。2階は甘味処「花園茶寮」になっていて、「ぬれ甘なつと」を使ったお菓子や、秋から冬にかけては、こだわりの自家製餡を使った「御膳志る粉」も楽しむことが出来る。日本の和菓子文化に触れるきっかけに、足を運んでみるのはいかがだろうか。

御膳志る粉写真

株式会社花園万頭

本社所在地 東京都新宿区新宿5-16-15
TEL 03-3352-4651
URL http://www.tokyo-hanaman.co.jp

花園万頭新宿本店・花園茶寮

住所 東京都新宿区新宿5-16-15
* 都営新宿線新宿3 丁目駅から徒歩約5分
* 丸の内線・副都心線新宿3 丁目駅から徒歩約1分
営業時間 (売店)
 平日:9:00-19:00
 土日祝日:10:00-18:00
(花園茶寮)
 平日:10:30-19:00
 土日祝日:10:30-18:00
 *花園茶寮は閉店の1時間前ラストオーダー
定休日 なし
* 営業時間について、変更する場合がございますのでご了承ください。

新宿 観光情報

japan-guide.com http://www.japan-guide.com/e/e3011.html
  • 花園万頭新宿本店写真