感動の味と、おもてなしが味わえる 老舗の「すき焼き」

浅草今半すき焼き写真
あたたかいものが恋しくなるこの季節に食べたくなるのは、やっぱり鍋料理だろう。あらゆる食材を一緒に入れて、ぐつぐつ煮込んだ鍋をみんなで囲めば、身体だけでなく心まで、ほっこりあたたかくなる。日本の鍋料理の種類は沢山あるが、世界にも広く知られている鍋料理といえば「すき焼き」だ。
今回、我々はすき焼きの歴史と魅力を探りに、明治28年(1895年)創業の老舗「浅草今半」に取材にむかった。

浅草で「すき焼き」を粋に味わう

浅草今半写真

牛肉を用いた現代の「すき焼き」の歴史は意外と浅く、江戸時代末期ごろに誕生したと言われている。それまで日本では、一部の地域や階級で肉を食べることはあったが習慣としては根付いていなかった。明治に入り、関東地方では「牛鍋屋」が次々と開業。牛肉に葱を加えた「牛鍋」は文明開化の象徴として庶民の間で大流行した。

当時の東京を代表する繁華街の浅草。今もなお下町情緒を残すこの街で、伝統の味を提供してくれる店、浅草今半がある。浅草今半は創業明治28年(1895年)という長い歴史を持つ老舗だ。今回訪れた国際通り本店の広い店内には、椅子席や掘りごたつ席などの部屋があり、落ち着いた和の空間が広がる。着物を着た仲居さんに出迎えられると、それだけで心地よい緊張感がはしる。なんといっても、すき焼きは日本の代表料理。せっかく食べるなら、その文化まで堪能するのが粋というものだ。

厳選食材に心躍る

浅草今半すき焼き厳選食材写真

素材そのものの味が活かされる鍋料理の良し悪しは、食材選びが決め手といっても過言ではないだろう。浅草今半では、伝統を守り抜くプロの目利きが、すき焼きに合う食材を厳選している。まずはメインとなるのが牛肉だ。浅草今半のすき焼きに使用される牛肉は、黒毛和牛と神戸牛のどちらもメス牛だけ。最高品質の証である細かいサシがびっしり入った肉を、薄すぎず厚すぎず、ほどよい大きさにカットする。すき焼きには欠かせない長ねぎは「葱の中の葱」とも呼ばれ、甘みと辛みのバランスが良い江戸野菜の千住葱を使用。他にも、浅草で作られている豆腐をはじめ、白菜、玉ねぎ、椎茸、春菊、しらたき、そして、今半の焼き印が入った京都で作られている特注のお麩と、選りすぐりの食材が並ぶ。

浅草今半すき焼き調理写真

この厳選された食材を、「割下」と呼ばれる醤油ベースのタレを使ってシンプルに調理する。浅草今半流のすき焼きは、食材をいっぺんに入れるのではなく、順序立てて焼くように煮ていく。このタイミングが難しいのだが、最初に仲居さんがやりながら教えてくれるので安心だ。今回は、この道20年以上というベテランの高山さんが担当してくださった。鍋に割下を流し入れ、ふつふつと沸いてきたところで肉を1枚ずつ入れると、「ジュワ?」という耳ざわりの良い音とともに、食欲をそそる甘辛い香りが立ちこめる。肉が焼けたら生卵を溶いた皿にとり、残りの具材を並べて火を通す。「最初にお肉を1 枚ずつ焼いたら、あとはお好きなタイミングでどうぞ、とご案内しています。すき焼きは自分で作る楽しみもありますから」と高山さん。

浅草今半すき焼き調理写真

さっそく肉を生卵に絡まらせ、いただく。卵と絡ませることによって、マイルドになった甘辛味と、やわらかな霜降り牛の肉汁が口中に広がって、思わず顔がほころぶ。野菜には割下の味が染みており、噛むたびに甘みが広がっていく。日本人にとって馴染み深い醤油と砂糖の組み合わせは、食材そのものの味を一つひとつ際立たせ、絶妙といっていいほどにマッチするのだ。

お客様にとって心地よい“おもてなし”を追求

浅草今半仲居の高山さん写真

それにしても、箸を口に運ぶたびに感嘆の声を漏らしていたら、鍋を作るのを忘れてしまいそうになってしまう。「ひと通りご説明したら席を離れますが、お鍋の様子は時々見にうかがいます。お話が進んでお鍋を焦がしそうになるお客様もいらっしゃいますので、そういった場合には、割下を追加したり、お肉やお野菜を代わりに入れたり、作り進めることもあります。ただし、あくまでもお話の邪魔にならないことが鉄則です。つかず離れずの状態で、お困りの時に即座にお手伝いができるような、お客様に合わせたサービスを心がけています」
細部まで気を配り、こちらが声をかける前にさりげなく対応してくださる高山さん。お客様に美味しいすき焼きを心ゆくまで楽しんでほしいという“おもてなし”の心が伝わってくる。

鍋の作り方英語写真

さらに、浅草今半では海外からのお客様のために、鍋の作り方の行程を書きおこし、英語で翻訳したものまで準備している。「近年では、海外からたくさんのお客様がご来店されます。私たち仲居も、簡単な調理用語は英語でご説明できるように訓練しています。社内で定期的に英会話教室を開いているんですよ」と語ってくれた。昔からの伝統を守り育みながら、時代の変化に合わせて自分たちが変わっていく。1世紀以上続く老舗ならではの“おもてなし”の心意気を垣間見た気がした。

下町情緒が息づく東京、浅草。浅草神社の三社祭や、浅草寺のほおずき市、また新年の初詣など、年間を通して多くの観光客でにぎわいを見せる。現代にも残る江戸の粋な雰囲気に包まれながら、日本が世界に誇る「すき焼き」を浅草今半で味わってみるのはいかがだろうか。

秘伝の味を家庭でも

浅草今半牛肉佃煮写真

浅草今半ならではの行き届いた“おもてなし”と、秘伝の味のとりこになった常連からの「この味を家庭に持ち帰りたい」という要望をきっかけに生まれたのが、「牛肉佃煮」だ。昭和20 年、三代目・髙岡元一が素材と製法にこだわり、国産牛肉をやわらかく炊き上げ、すき焼き風に仕上げた「牛肉すきやき佃煮」が完成。佃煮ならではの濃厚な味わいで、ご飯や酒の肴などにぴったりだ。
浅草の粋な伝統が生んだ秘伝の味を家庭でも味わってみてはいかがだろうか。

Writer : YUKI MOTOMURA
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Photographer : KOJI TSUCHIYA

浅草今半 国際通り本店

所在地 東京都台東区西浅草3-1-12 *つくばエクスプレス浅草駅から徒歩約0 分
TEL 03-3841-1114
定休日 なし
営業時間 11:30-21:30 (ラストオーダー20:30)
Facebook https://www.facebook.com/asakusaimahan
URL http://www.asakusaimahan.co.jp/kokusai

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

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