季節と出逢う「秋の和菓子」

秋の和菓子
季節の情景や伝統行事、人々の願いなどが込められた日本伝統の「和菓子」。芋や栗などのお菓子に適した食材が豊富な秋は、“旬”の和菓子に出逢える季節。毎年この時期を楽しみにしている方も多いだろう。東京神楽坂にある老舗和菓子店「五十鈴(いすず)」の和菓子とともに「秋の和菓子」をご紹介しよう。

秋の和菓子

栗蒸し羊羹

●栗蒸し羊羹

やわらかく香りが強い国産の新栗をたっぷり使用した羊羹。栗はざらめと共にじっくり三日間かけて煮込み、その煮汁も羊羹に混ぜ込むことで、しっとりとした食感と口いっぱいに広がる栗の風味が楽しめる。

芋羊羹

●芋ようかん

材料は甘みの強いさつまいも「なると金時」と少量の塩と砂糖のみ。混じりけのない芋本来のやさしい味わいと無添加であることから幼児の離乳食としても人気だ。水っぽさが出る前の芋の“旬”の時期だけしか作られない、期間限定の一品。

羊羹巻き「柿」

●羊羹巻き「柿」

刻んだ栗の入った白餡を求肥で包み、それをさらに鮮やかな柿色の羊羹で包んだ上生菓子。寒天でつるりとコーティングされた見た目はまさに丸々と熟れた柿のよう。9月の販売開始から日に日に羊羹に赤みを足していき、移ろいゆく季節を表現している。

ねりきり「桔梗」

●ねりきり「桔梗」

小豆のこし餡を、白餡と淡い紫色の餡で包み桔梗の花を表現したねりきり。白と紫色の2色の餡を重ね合わせて丁寧にぼかし、桔梗の花びらの繊細な透明感を表現している。秋のお茶の席にぴったりな一品だ。

●きんとん「毬栗(いがぐり)」

●きんとん「毬栗(いがぐり)」

茶色のねりきりで小さな栗を表現し、ふるいで漉したそぼろ状の白餡でやさしく包んだ秋らしい一品。中央には小豆の粒餡が入っており、やわらかく食べやすいことからお茶の席でも人気。

小栗饅頭

●小栗饅頭

甘露煮の栗を細かく刻んで白あんと混ぜ込み、卵や小麦、練乳でつくったしっとりした皮で包んだ焼き菓子。二重に塗った卵のツヤで、まさに穫れたての栗を連想させる見た目も秋らしいお菓子。

※掲載している和菓子の名称は「五十鈴」での販売名です。地域によって呼び方が異なるものがあります。

行事に深みをもたせる和菓子の季節性

秋の食材

「五十鈴」代表の相田茂さんに、秋の和菓子の特徴についてお話を伺った。

「秋は栗やさつまいもなど、秋ならではの素材が豊富な季節です。五十鈴では輸入素材や加工された素材はあまり使用していないので、この時期にしか作れないお菓子も多くあります。例えば栗蒸し羊羹などは国産の新栗が手に入る季節、9月から12月頃までしかつくることができない。この時期だけの味わいなんです」。

1月のお年賀の時期にも栗商品を求められることがあるというが、その年の気候によっては12月頭で国産の栗の入荷が終わってしまうことも。毎年販売時期が少しずつ異なるのが、まさに“旬”の素材を使っている証明ともいえる。

相田さんによると、和菓子は季節感を一歩先んじてつくられるそう。おやつの時間やお茶の席で、「ああ、今年もこの季節が来たな」と感じてもらうことも、和菓子の大切な役割のひとつなのだ。

秋の和菓子

季節と共に訪れるイベントや祭事も、和菓子にとって切っては切り離せない存在。秋は9月の敬老の日から始まり、おはぎを供えるお彼岸、お月見団子を供える十五夜などの行事が続く。日本古来の行事を子どもに伝えようと、行事毎に和菓子を買いに来る母親も少なくないという。

「世の中の流れに合わせて、新しく定着したイベントに合わせた上生菓子などもつくっています。それぞれのイベントには文化の伝承や人々の願いが込められており、和菓子もそれを支える一端です。うちの和菓子は賞味期限は短いですが、そのぶん無添加で保存料もつかっていないので、安心してお子様やご家族で食べていただけますよ」と、相田さん。

せわしなく過ぎていく季節をじっくり味わうためにも、この秋は温かいお茶ともに、秋だけの和菓子を楽しんでみてはいかがだろうか。

Writer : YOKO AOYAGI
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Photographer : CHIE MARUYAMA

神楽坂 五十鈴

所在地 東京都新宿区神楽坂5-34
TEL 03-3269-0081
定休日 日曜日、祭日(こどもの日、お彼岸は営業) ※その他不定休があります
営業時間 9:00-19:30
URL http://isuzu-wagashi.co.jp

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

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