“旬”をあじわう季節のお菓子「桃」

“旬”をあじわう季節のお菓子「桃」
愛嬌のある見ためと甘美な香り。梅雨明けから晩夏まで“旬”を迎える「桃」は、生食から加工品まで、広く日本人に愛されている果実だ。今回は、そんな桃の目利きポイントと、桃を使ってご家庭で手軽につくれる冷たい「桃クリーム大福」のレシピをご紹介しよう。

夏の季節とともに次々と登場する、多彩な品種

矢嶋文子さん

桃の目利き方法やおすすめの食べ方についてお話をうかがうため、東京都・神楽坂で全国の“旬”野菜を取り揃える八百屋「瑞花-suika-」を創業した矢嶋文子さんを訪ねた。

「桃はとても品種が多く、ハウス栽培のものを除くと6月から9月中旬まで多くの品種が順に実ります。美味しい“旬”は7月中旬から9月中旬頃ですね。とても繊細で傷みやすいので、まだ硬いうちに出荷されてしまうこともありますが、やはり木でギリギリまで完熟してから収穫しているものが美味しい。ですから、お住まいの地域から産地が近いものを買うことがおすすめです」。

桃

桃の品種は大きく3つに分かれる。「白鳳(はくほう)」は実が白く柔らかい品種で、香りが良く甘くて酸味が少ない。果汁がしたたるほど、みずみずしいのが特長。「白桃(はくとう)」は皮が白く白鳳に比べ実がしっかりとしていて、上品な甘みがある。「黄桃(おうとう)」は皮も実も黄色く、しっかりとしていて酸味が強い。以前は加工品用としての流通が多かったが、最近は生食に向く品種も増えてきているという。皮が薄くつるっとした見た目が特長だ。

「春、花の咲く時期の桃畑はまさに桃源郷。ピンク色の花が咲き乱れ、夢のような景色なんですよ。桃は中国では仙果(せんか)と呼ばれ、慶事に使われたり葉も種も漢方に使われる大切な果物。ミネラルが豊富なので、夏に体がだるく疲れた時に食べると良いですよ」と、矢嶋さんが教えてくれた。

ひと手間かけて、さらに広がる桃の魅力

桃の魅力

繊細で傷みやすい桃は温度変化に弱いため、陽の当たらない常温の室内で保管すると良いという。日持ちさせたいときは紙袋に包んでからビニール袋に入れ、直接冷気が当たらないようにしてから冷蔵庫の野菜室に入れるのがおすすめ。

お菓子作りなど加工をするときはあえて硬めの桃を選ぶと良いと、矢嶋さんが教えてくれた。酸味があるので砂糖と合わせるとちょうど良く、火を入れても崩れにくい。熟した桃は皮を剥きやすいが、まだ硬く皮が剥きにくい場合は、短時間冷凍したりお湯につけたり、それでも硬いときは少し長めにお湯で茹でると良いという。

桃の魅力

「桃は皮を剥くと茶色く変色してきてしまうので、皮を剥いて直ぐに食べない場合は、レモン果汁をふるか、熱したシロップにくぐらせるといいですよ。ミルクプリンなど乳製品とも相性がいいですし、サラダに入れたり、生ハムと一緒に食べても美味しいです。塩とオリーブオイルで桃のカルパッチョやパスタにするのもおすすめです」と、矢嶋さん。桃の新たな楽しみ方が広がりそうだ。

夏のおもてなし、ひんやり「桃クリーム大福」

桃クリーム大福

お菓子研究家のmarimoさんに、桃の魅力を生かした夏のお菓子を考案していただいた。今回は「桃クリーム大福」。ひんやりと冷たいクリームが暑い時期にも嬉しい一品だ。

「お菓子作りにも“旬”の果物を取り入れていただくと、季節を感じられ、より一層豊かな時間を過ごせると思います。それぞれの果物の水分量に応じて、作るお菓子を決めることがおすすめです」と、marimoさん。

桃やマンゴーなど、水分の多い果物はピュレ状にしてムースなどの冷たいお菓子にすると喉越しが良く、パフェなどでクリームやアイスと合わせるとジューシーさが際立つという。

桃クリーム大福

一方、バナナやブルーベリーなど水分の少ない果物は焼き菓子にトッピングして焼くことがおすすめだという。焼いてもべちゃっとせず、生地の食感を損なうことなく調和するとのこと。

marimoさんも夏に作ることの多いという冷たいお菓子は、冷やすことで甘みが感じられにくくなるため、少し甘さを強めに作ったり、味が濃くてはっきりした果物を選ぶようにしているという。特に、生クリームと果物を合わせるときは、果物の味がクリームに負けてしまわないよう量を調整したり、場合によってはリキュールなどで味に深みを持たせると良いという。

桃クリーム大福

★ おすすめレシピ

桃クリーム大福

桃クリーム大福

「今回紹介した桃クリーム大福は、ごろっとカットした桃と、生クリームを求肥で包んだお菓子です。ジューシーな桃の果汁と、まったりしたクリーム、モチモチの求肥の組み合わせがたまらなく美味しいですよ。求肥は白玉粉を使って電子レンジで3分加熱するだけでできるので、お子様と一緒に作れるくらい簡単です。中に入れる果物は、お好みのものでもアレンジ可能です。ぜひ色々とチャレジしてみてくださいね」と、marimoさん。

爽やかな夏のおもてなしの一品として、桃のお菓子作りにチャレンジしてみてはいかがだろうか。

情報提供:八百屋瑞花 矢嶋文子さん
桃

“旬”の時期

7月中旬から9月中旬

目利きポイント

・全体が赤く左右対称でまん丸、ずっしりと重いもの
・実が大きいもの
・皮が赤くなる品種は果点(白い斑点)が出てくると熟した証拠
・香りが良いもの

美味しい食べ方

・熟した実を丸ごとかぶりつく
・サラダや生ハムと一緒に
・塩やオリーブオイルでカルパッチョやパスタに
・乳製品と合わせて食べる

Writer : YOKO AOYAGI
 / 
Photographer : marimo / CHIE MARUYAMA

八百屋瑞花-suika-

瑞花
所在地 東京都新宿区神楽坂6-8-27 シゾン神楽坂1階 *都営大江戸線牛込神楽坂駅 A3出口より徒歩3分 *東京メトロ東西線神楽坂駅1番出口から徒歩約3分 *地下鉄飯田橋駅B3出口より徒歩7分
TEL 03-6457-5165
定休日 無休
営業時間 11:00-20:00 (日曜・祝日は19:00まで)
URL http://www.suika.me/

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

ヤオヤスイカ 横浜西口店

ヤオヤスイカ
所在地 神奈川県横浜市⻄区南幸1‒5-1 ジョイナス地下1階 FOOD&TIME ISETAN YOKOHAMA内
TEL 045-624-8607
定休日 ジョイナスの休館⽇に準ずる
営業時間 10:00-22:00
URL http://www.suika.me/yokohama

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

プロフィール

marimo
お菓子研究家・製菓衛生師 株式会社マリモカフェ 代表取締役 大学卒業後、大手印刷会社に勤務しながら国際製菓専門学校の通信教育課程で製菓を学ぶ。その後複数のお菓子教室に通い、2015年に独立。 お菓子教室を主宰する傍ら、企業向けレシピ開発や書籍、雑誌、WEBへのレシピ提供、テレビ、ラジオ出演など幅広く活躍。写真撮影にも定評があり、カメラ雑誌への写真提供、講習会、イベント出演なども行う。著書に『クックパッド まりも1016の大好評お菓子』(宝島社)『6コマお菓子レシピ』(ワニブックス)『marimo cafeのしあわせスイーツ』(SBクリエイティブ)がある。
URL http://www.marimo-cafe.com/
シェア
ツイート

関連記事

おすすめ記事