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THE ROOTS OF SHUN(May 2017)

南国の太陽を浴びて育つ伝統野菜「黒皮かぼちゃ」

― 宮崎県宮崎市

黒皮かぼちゃ

(取材月:March 2017)

温暖な気候に恵まれ、日照時間が全国トップクラスの宮崎県で、日光をたっぷり浴びて育つ特産物、「黒皮かぼちゃ」。別名「日向かぼちゃ」とも呼ばれており、黒く艶やかな皮が印象的な、日本かぼちゃを象徴する品種だ。西洋かぼちゃとは違った独特の食感と味わいから、京都を中心に日本料理の最高級食材として重宝されてきた。

10人の生産者でつなぐ伝統と技

日照時間の長い宮崎県で、古くから盛んに行われていたかぼちゃの栽培。1542年にポルトガルから持ち込まれたのが、その始まりとされている。現在では西洋かぼちゃが主流になったことで、日本かぼちゃの生産地は国内でも数えるほどまでに減少。地元に伝わる民謡にも登場するほど歴史ある伝統野菜の「黒皮かぼちゃ」も、宮崎県内で生産する農家はいまでは25人(2017年3月現在)のみとなり、川南町、宮崎市・生目(いきめ)を中心に生産されている。そのなかでも立体栽培をてがけているのは、生目地区の10名(2017年3月現在)となっている。

「黒皮かぼちゃ」を食べると、驚くのがその味わいだ。我々が慣れ親しんでいる西洋かぼちゃといえば、お菓子作りに使えるほどまったりと甘く、ホロホロと柔らかいのが特徴。一方「黒皮かぼちゃ」はさっぱりとした味わいで、粘質な果肉は煮物にしても煮崩れないほど。それでいて、いざ食べてみると舌触りはとろけるようになめらかで、皮の部分まで美味しく食べることができるのだ。

どんな味付けや調理法にも合うということで、様々な料理に活用できるのが「黒皮かぼちゃ」の魅力。また、ごつごつと盛り上がった表皮にくっきりと縦線が刻まれていて、小ぶりでコロンとした形も愛らしい。見た目にも味わいにも、どこか“和”の奥ゆかしさを感じさせる上品なかぼちゃなのだ。

手の上のかぼちゃ

白い粉ふきが“完熟”の証拠

生目で20年間「黒皮かぼちゃ」を生産している富永信行さんは、冬でも日照時間の長い宮崎県の気候を活かし、冬から春にかけて「黒皮かぼちゃ」をハウス栽培している。気温30℃にもなるハウスの中に整列した約1800本もあるというツルを見渡すと、黒くてまん丸な「黒皮かぼちゃ」が枝もたわわに実っていた。

葉は日の光をたっぷり浴びようと、天に向かって大きく広がっている。富永さんの一日は、毎朝一番に開く元気な状態の雌花に、雄花の花粉を付けて交配させて回ることから始まる。一つひとつ手作業なので、なかなか骨の折れる作業だ。富永さんが20年かけて作り上げた土は粘土質で、「固相」・「液相」・「気相」のベストなバランスを保っている。粘り気のある土のほうが、かぼちゃがよく根を張るのだという。

かぼちゃは“地這い栽培”という地面にツルを這わせる栽培方法が一般的だが、ハウスで育てる「黒皮かぼちゃ」は支柱を立ててツルを縦に伸ばしていく“立体栽培”が主流。こうすることでより効率的に、より美しい見た目のかぼちゃに育てることができる。

「10月に苗を定植してじっくり育て、ちょうど12月の冬至の頃にできる一番果から始まって、6月ごろの六番果まで収穫します。だから一つの苗から1シーズンに穫れるかぼちゃは6個くらい。宮崎は日照時間が長いので、葉がたくさん光合成をして栄養をたっぷり含んだ『黒皮かぼちゃ』をつくることができるんです」と富永さん。

美味しい「黒皮かぼちゃ」を作るために一番大切なのが、収穫の時期をしっかりと見極めること。完熟具合を示すのは、果実を保護するために生じる「ブルーム」と呼ばれる白い粉だ。

「収穫時期の目安はこれ、皮の表面に白い粉がついているでしょう? 真っ黒ではなく、少し白っぽく粉をふいているのが完熟の証なんです。それから、ツルと実をつなぐ境目の果梗(かこう)という部分の色が黄色くなっていること。緑色のものは収穫するにはまだ早い。あとは、完熟したかぼちゃは触ると皮がツルッとするんです。長年つくっていると、触っただけでわかるようになってきます」。

実際に一つ収穫してもらうと、切り口からじわっと玉のような水が染み出してきた。富永さんが「生命力やね」と言うとおり、かぼちゃがツルを通して土からしっかりと水分を吸収して、大きく実っているなによりの証拠だ。

ビニールハウス

富永信行さん

収穫したかぼちゃ

地元の伝統野菜を守り続けたい

富永さんの奥さんが手製の「黒皮かぼちゃ」のオリーブオイル焼きと煮物を用意してくれた。食べた瞬間はしっかりしているのに、噛むほどにきめ細かい果肉が絹のようにほどけていく。シンプルな味付けがよく染み込んで、「黒皮かぼちゃ」の上品な甘みと味わいを引き立たせてくれている。

「黒皮かぼちゃの味わいが一番よくわかるのは、やっぱり煮物。これからの時期はタケノコが美味しいから、一緒に煮付けるのもいいよ。うちでは味噌汁の具にもするし、冬はおでんに入れたりね。煮崩れないから、おでんに入れても大丈夫なんです」と富永さんは自慢のかぼちゃの食べ方を教えてくれた。

生目で生まれ育った富永さんは、20年前にサラリーマンを辞めて「黒皮かぼちゃ」を作り始めた。そこには伝統野菜を、残していきたいという想いがあったという。

「宮崎にしかない野菜だもんね。収量が多くないのでつくるのは大変ですが、守っていきたいなと思っています。いまは関西への出荷が多いですが、今後は関東の人にもこの味わいを知ってもらえたら。大事に育てて、収穫する瞬間が一番楽しいです」と笑う富永さん。

宮崎が誇る伝統野菜「黒皮かぼちゃ」。これまで知っていたかぼちゃとはまったく違う味わいを、一度体験してみてほしい。

皮むきかぼちゃ

富永夫婦

Writer : ASAKO INOUE / Photographer : YUTA SUZUKI

宮崎市の「黒皮かぼちゃ」

情報提供:黒皮かぼちゃ農家 富永信行さん

黒皮かぼちゃ

“旬”の時期
・ハウス物は12〜6月
・露地物は10月〜11月

目利きポイント
・ツルと実をつなぐ果梗(かこう)の色が黄
・皮の色が黒く、表面に白い粉がふいている
・皮がツルッとしており、しっかりと硬い
・見た目よりもずっしりと重い

宮崎県 観光情報

japan-guide.com http://www.japan-guide.com/list/e1245.html
Japan Travel http://ja.japantravel.com/miyazaki