THE ROOTS OF SHUN(April 2017)

有機農業の町で育つお日様色の日向夏

― 宮崎県東諸県郡綾町

日向夏

(取材月:March 2017)

「日向夏」は、温暖な気候で数々のフルーツの名産地でもある宮崎県で生まれた柑橘だ。その始まりには、いまから約200年前にある民家で自生していたのを偶然発見されたというユニークなエピソードがある。

宮崎県の沿海部を中心に栽培されている日向夏だが、中西部に位置する綾町は町をあげて“有機栽培”に取り組む全国的にも有名な生産地。豊かな綾町の自然が育てる日向夏は、一体どんな味がするのだろうか。太陽の光をたっぷりと浴びて鮮やかな黄色に色づき、“旬”を迎えた綾町の日向夏を取材した。

30年以上前から有機栽培に取り組む綾町

宮崎県は年間を通して温暖な気候が特徴で、日照時間や快晴日数は国内トップレベルを誇る。そんな宮崎県で、30年以上も前から町をあげて“有機栽培”に取り組んでいるのが綾町だ。

綾町は昭和63年(1988年)に「自然生態系農業の推進に関する条例」を独自に制定し、農薬や化学肥料をできるだけ使わない有機農業を開始。以来ずっとそのスタイルを貫き続け、全国的にも有名な有機栽培のパイオニア的存在として知られている。

町の約80%が森林であり、名水百選にも選ばれる水源を有するなど自然豊かな環境にも恵まれた綾町の産物は、日向夏やマンゴー、きんかんなどの果物はもちろん、キュウリなどの野菜、牛、豚といった畜産物まで、「綾ブランド」として高い評価を受けている。宮崎県庁でみやざきブランド推進を担当している深田直彦さんが綾町の魅力を教えてくれた。

「県内外から、農畜産物を求めて綾町にやってくる観光客の方が多いです。森林や美しい水だけでなく、星空百選に選ばれるほど星空も綺麗なんですよ。最近ではこの環境に魅力を感じ、県外からの移住者も多くなってきました。農家のみなさんも真面目で、全員が力を合わせて有機栽培に取り組んでいます。自然生態系を崩さない農業というのは、いまでこそ意識されるようになりましたが、綾町が取り組みを始めた頃は飽食の時代真っ盛り。そんな時代にいち早く有機栽培に着手した当時の町長にはきっと、先見の明があったのでしょうね」。

宮崎県

一番美味しい日向夏は晩春に出回る露地物

日向夏という名前から“旬”は夏なのかと思いきや、露地物の日向夏が“旬”を迎えるのは3月から。

農家の花田健二さんの果樹園を訪れてみると、山の斜面に沿って生えたたくさんの樹で、たわわに実った日向夏が収穫の時を待っていた。

ハウス栽培と露地栽培を手がけている花田さんは、「ハウス物は2〜3月、露地物は3月〜5月初旬くらいまで出荷します。1シーズンで20t以上は収穫するかな。一番美味しいのはもちろん、露地物の在来種。種が多いから食べにくいかもしれないけど、これが本来の日向夏の味。糖度があっても、酸味が抜けすぎていては駄目。酸味と甘味のバランスが大事」と話す。

日向夏は4月半ばに花をつけ、受粉後に実をつけていく。8月の暑い時期には傷がつかないよう一つひとつの実に袋を被せ、温かい太陽の光を浴びながらふっくらとした実に成長。もちろん綾町の条例にのっとって、花田さんの果樹園でも除草剤は一切使わない。畜産業も盛んな綾町では、土作りにも堆肥を活用している。

「日向夏の出来は自然の力によるところが大きい。日照時間が短くても、雨が少なすぎても実の太り具合が悪くなる。台風もよく来るので、枝が折れてしまったり。除草剤を使わないので草刈りなどで忙しいけど、大変だと思ったことはない。“美味しくなぁれ、美味しくなぁれ”と思いながら毎日作業しています(笑)」。

果樹園

  • 日向夏
  • 花田健二さん

白い“ワタ”に日向夏の美味しさが詰まっている

日向夏の味わいを楽しむには、カットの方法を知っておかなければいけない。ほかの柑橘と違い、実の回りについている白い“ワタ”を一緒に食べるのが日向夏の美味しい食べ方だからだ。花田さんにお願いして実際に切ってもらった。

まずは白いワタの部分を残すように外皮の黄色い皮部分をリンゴと同じ要領で剥く。剥いた実はそぎ切りにしていく。種の多い芯の部分は食べないそう。切り終わりを見てみると、白いワタの縁取りと中の黄色い実のコントラストがとても綺麗だ。

「黄色い実は酸味が強く、甘味のある白いワタの部分と一緒に食べるとちょうど良い美味しさになるんです。そのままでも美味しいですが、様々な調味料にも合うので、宮崎県民は醤油をつけて食べたり、サラダに使ったりすることもありますよ」と花田さん。

食べてみると、ワタの部分はたしかに甘く、黄色い実の酸味とジューシーさと相まってとてもバランスが良い。さらに香りも濃厚で、爽やかな余韻がいつまでも口の中に広がっていく感覚に。聞けば日向夏は柚子の遠縁にあたると言われているそうで、この香りの良さにも納得だ。

「年に何度かお客さんの前で日向夏の展示販売をするのですが、その時が一番楽しいですね。目の前で日向夏を食べているお客さんが“美味しい!”と言ってくれるのを見ると、励みになる。特に子どもだとうれしいね。子どもは味に正直だから」と笑う花田さん。

綾町の自然の恵みを受けて育った、太陽のような日向夏を一度食べに来てみてはいかがだろうか。

皮むき

日向夏

Writer : ASAKO INOUE / Photographer : YUTA SUZUKI

綾町の日向夏
情報提供:綾町果樹振興協議会 花田健二さん

綾町の日向夏

サラダ

“旬”の時期
・ハウス物は2〜3月
・露地物は3月〜5月初旬

目利きポイント
・鮮やかな黄色をしている
・持ってみて見た目の割にずっしりと重みがある

美味しい食べ方
・白いワタを残すようにカットする
・そのままはもちろん、醤油をつけて食べたり、サラダに入れてドレッシングをかけて食べても美味しい

宮崎県 観光情報

japan-guide.com http://www.japan-guide.com/list/e1245.html
Japan Travel http://ja.japantravel.com/miyazaki