THE ROOTS OF SHUN(January / BACK NUMBER 2016)

北国の雪の下で、強く甘く育つ“雪人参”

― 青森県深浦町

ふくうら雪人参写真

(取材月:January 2016)

世界自然遺産・白神山地に抱かれる深浦町。日本海沿いに南北に長く伸びるこの町は、山にも海にも恵まれ、農業はもちろんマグロ漁をはじめとする漁業も盛んな町である。そうした深浦町で、注目を集めているのが「ふかうら雪人参」だ。氷点下を下回るほどの厳しい寒さのなか、その名の通り雪の下から掘り出される人参は、驚くほど甘く深い味わいを持つ。

美味しさのピークは極寒の雪の中

白神山地の麓に広がる標高180~200mの高台にある畑で「ふかうら雪人参」は育まれている。気温は-3℃。冷たい風とともに時折雪がちらつくなかで、「ふかうら雪人参」は一つひとつ人の手で丁寧に掘り出されていく。

「ふかうら雪人参」の収穫は12月~3月末におこなわれる。
一般的な人参は、種を蒔いてから早くて3ヶ月ほどで収穫を始めるが、「ふかうら雪人参」は5ヶ月以上もかけてじっくりと、土の中で完熟状態になるまで育てられるという。

また、一年で最も寒さが厳しい冬に収穫時期を合わせていることにも大きな理由がある。
「寒くなると人参は凍らないようにと、でんぷん質を糖に変え自分の身を守ります。そうすることで人参の糖度は高くなり、旨み成分を多く含んで育っていきます。人参にかぶさっている雪も大事です。雪は毛布のような役割をして、土のなかの温度を0℃前後に保ってくれているので、凍るか凍らないかギリギリの一番美味しい状態で収穫できます」と、話してくれたのは「ふかうら雪人参」の生みの親で舮作(へなし)興農組合、代表理事の坂本正人さん。

一般的な人参の糖度が7度程度なのに対し、「ふかうら雪人参」の糖度は平均10度。また、グルタミン酸やβカロテンといった旨み成分も一般的な人参の1.5倍ほど高いという。
そして雪に加え、白神山地の清らかな伏流水、夏は涼しく冬は寒すぎない日本海側の地域特有の気候、海から吹く潮風といった生育には最適な環境が揃う深浦町の風土も相まって、甘みと旨み豊かな「ふかうら雪人参」が育てられていくと坂本さんは教えてくれた。

ふかうら雪人参収穫写真

  • 坂本さん写真
  • ふかうら雪人参写真

偶然から生まれた「ふかうら雪人参」

「ジュースにするのが一番うまい」と、坂本さんは「ふかうら雪人参」100%の生搾りジュースを振る舞ってくれた。飲んでみると驚くほどに甘い。また、人参独特の青臭さもなく、口当たりはとてもまろやか。「うまいでしょ?」と、坂本さんも満足そうに笑みを浮かべる。

もともと漁師だった坂本さんは、1976年に仲間と共に舮作興農組合を立ち上げて農業の道へ。ただ、雪で作業ができない冬は収入が減ってしまうことが課題だった。そんな中、手塩にかけて育てた人参を収穫しようとした晩秋のある日、大雪のため、雪に埋まってしまっている人参を「もうダメか」という思いで掘り起こして食べてみると、予想外の美味しさに驚愕。

「これはいける」と雪人参の開発に着手し、約20年前から栽培を始め、2008年には「ふかうら雪人参」としてブランド化に成功した。
「厳しい真冬の寒さのなかでの作業は決して楽ではないが、それでも出稼ぎに出て、半年間も家族と離れてしまうよりは幸せだよ」と坂本さんは話す。

現在、「ふかうら雪人参」の収穫量は1シーズンで1000tほど。坂本さんはもっと生産者を増やしていきたいと話す。
「10年前くらいから新しいお客さんも増えてきたけれど、皆さんに十分に供給できる量は収穫できてない。町内であれば同じ栽培方法で作ることができるので、町全体で取り組みたいと思っている。それに、県外へもっと出荷することで、“深浦”の地名も知れ渡っていくでしょ」。

収穫写真

坂本さん写真

「ふかうら雪人参」を町一番の名物に

「ふかうら雪人参」を深浦町の名物として盛り上げていこうと、町の人々も奮闘中だ。
深浦町では、「ふかうら雪人参」を使った様々な商品開発が行われていることもあって、町のいたるところで「ふかうら雪人参」を使った食に出会うことができる。

深浦町農水産物加工場では、「ふかうら雪人参」を使った商品「雪にんじんシリーズ」を製造している。現在ドレッシング、ジャム、パスタソース、ポタージュの4商品が市場で販売されているほか、業務用向けのペースト、パウダー、ダイスカットなどの一次加工品も作っている。

加工の工程では、人参の加熱にスチームを使うのがポイントになると教えてくれたのは、商品開発を担当する工場長の島元義彦さん。
100℃の熱で9~10分間スチームすることによって、茹でるよりも「ふかうら雪人参」特有の甘みと旨みを最大限に残すことができるというのだ。

「人参そのものが美味しいので、素材の味を活かす商品づくりを心がけています。『ふかうら雪人参』は牛乳や生クリームとの相性が抜群ですよ」。
今後も「ふかうら雪人参」の素材を活かした商品ラインナップを増やしていくと島元さんは意気込む。

日本海を望む絶景露天風呂が有名な黄金崎不老ふ死温泉でも「ふかうら雪人参」が味わえる。

黄金崎不老ふ死温泉では、朝食にはジュース、夕食にはデザートのアイスクリームにと、ふんだんに「ふかうら雪人参」が使ったメニューが提供され、お土産には観光客から好評を博している「ふかうら雪人参もち」を販売している。
また、深浦の天然本マグロを様々な形で味わえる「深浦マグロステーキ丼」にも「ふかうら雪人参」を使ったゼリーが付いてくる。深浦町の海の幸であるマグロを堪能した後に、「ふかうら雪人参」のデザートを口に入れる瞬間は至福の時だ。

気軽に「ふかうら雪人参」を味わいたい場合はJAつがるにしきたが手がけた「ふかうら人参ジュース」がおすすめ。リピーターが多く、県外からも定期的に購入されているほどの人気商品だ。

隠し味にレモン汁を少しだけ加えた「ふかうら人参ジュース」は、砂糖を一切不使用ながら甘さは十分で、「人参嫌いのお子さんでも飲めました。という声もたくさんいただいています」と、JAつがるにしきた深浦支店の岩谷利之さんは話す。

北国の厳しい自然が育む「ふかうら雪人参」。その別格の甘みと旨みは、町の人たちの手によって様々な商品へと昇華され、味わった人たちを虜にさせていく。ぜひ一度「ふかうら雪人参」の味をあじわってみてはいかがだろうか。

島元さん写真

ふかうら雪人参写真

黄金崎不老ふ死温泉写真

  • 夕食メニュー写真
  • ふかうら人参ジュース写真

Writer : ASAKO INOUE / Photographer : KOJI TSUCHIYA

深浦町「ふかうら雪人参」
情報提供:舮作興農組合の代表理事 坂本正人さん

ふかうら雪人参

“旬”の時期
・1月~2月中旬

目利きポイント
・輪切りにして芯周辺の色が濃いもの
・丸みがあるもの
・サイズは少し大きめ(250グラム程度)のもの

黄金崎不老ふ死温泉

住所 青森県西津軽郡深浦町大字舮作字下清滝15
*JR五能線ウェスパ椿山駅より車で5分
TEL 0173-74-3500
URL http://www.furofushi.com/

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