THE ROOTS OF SHUN (April 2014)

天草の百姓
馬場照昭さんの春玉葱と旬野菜

― 熊本県天草市

(取材月:April 2014)

海に囲まれた諸島、熊本県天草。この海と山に恵まれた土地で無肥料、無農薬の自然栽培で野菜を作り、天草の魅力と活力を作っていく取組みを行う「天草育組(あまくさはぐくみ)」の一員でもある馬場照昭さん。

馬場さんは、畜産業と野菜づくりを並行して行っていたが、
「畜産に必要な飼料を輸入物に頼っているのはどうなのか?」
という疑問が生まれ、その頃にバイオエタノールへの世界的な注目と原油価格の上昇があり、7年前に野菜づくり一本に取り組み始めた。そして、自然栽培の野菜づくりの道へ歩みを進めたのだ。

馬場さんの玉葱写真

馬場さんの説明写真

自然栽培との出会い

きっかけは、育てていたジャガイモが<そうか病>という病害にかかり、ジャガイモの9割がその病気にやられてしまったこと。
「畑を変えるか、土壌洗浄をするか」
で悩んでいた馬場さんは、別の道もあるはずとその頃に出会った菌の研究者たちからインスピレーションを受け、有機栽培に切り替えた。だが、有機栽培でも野菜の味の問題に直面する。その問題が畑の栄養過多が原因だと気づき、試行錯誤していたある夏、たまたま枯れ草だけを土に入れて育ててみた玉葱の味が格段に美味しくなった。このことがきっかけで、自然栽培の道を歩みだしたという。

馬場さんの自然栽培のスタイルはとてもシンプル。
「余計なものを畑に持ち込まない。ここで作っている野菜はもちろん、自生している草を全て土に返します。」

肥料は人間が考えた枠組みであり、「窒素」「リン酸カリ」などの養分を畑にまくのは、もっと早く育てたい、もっと多く収穫したいという人間の欲であるという。その欲が土のバランスを崩し、作物に影響を与えてしまうと考えている。

「自然栽培は難しいことではない。昔から農業は続いているわけで、その当時肥料など使っていませんでした。農業を難しくしているのは、人間の欲によって肥料などを土に入れることでバランスを崩しているからなのです。」

馬場さんのこだわりは2つ、土の中のミネラル成分と生息する菌・微生物だという。
「この地球の海水のミネラル成分と人間の羊水のミネラル成分のバランスはかわらない、そのバランスを土の中でも作ってあげる。自然界のシステムだと長くかかるが、草を刈り枯らすことで、冬の状態を作りそのサイクルを早めるのが僕の仕事です。」

つまり、土の中のバランスを自然界においての最良に整えることが仕事なのだ。シンプルではあるが簡単ではない。畑一つ一つの性格や立地する場所でどんどん異なっていくのは当然で、その年の天候など多くの要素が影響してくる。ただ、馬場さんが信じているのは、植物は光合成で自分のエネルギーを作り育っていくということ、そのなかでの環境づくりを重視している。

自然栽培のメリットは、安全性や味だけではなく経済的なメリットもあるという。
「肥料がいらない、農薬がいらない、それをまく作業コストもかからない。だから収益率が高くなるのです。」

生産性を高めるのはもちろん重要だが、そこに重きを置かず生産コストを下げることで経済的なメリットも実現しているのだ。

馬場さんの仕事の様子写真

後押しする天草の自然環境

もちろん、天草特有の自然環境が自然栽培を後押ししている。
「海岸沿いは海風が入る。潮風が自然に入る。海の中のミネラル成分が自然と土に入る。」

それは、味に端的に表れるという。天草北部の苓北(れいほく)地域と南部の牛深(うしぶか)地域の特に海岸沿いの斜面で獲れるミカンの味は格別で、冬の荒れた海が苓北地域に海風・潮風を運び、夏に荒れる南部の海が牛深地域に同様の風を運んで、海のミネラル成分が自然と土に入ることによって良質な土が自然と形成されているからだ。

天草はそういった面で奇跡的な場所でもあり、海と島、土地のバランスが美味しい自然栽培野菜に適しているのだろう。

馬場さんの玉葱畑写真1

今は春玉葱の最盛期!

そんな、馬場さんの畑の春玉葱が旬の盛を迎えている。天草の土と太陽と海に育てられた自然栽培の玉葱が畑から顔を出し葉っぱを空へ向けて茂らせ出荷を待っている。

現在では、年間30品目に及ぶ野菜を栽培しており、特にオススメは、7月の<天草オクラ>、6月~7月の熊本の在来種<春日ぼうぶら>は「ほんとにうまい!」ので、ぜひ食べてほしいとのこと。

馬場さんの畑は平らで広大でもなく、素人からみても農業に適した恵まれた土地というものではない。斜面の畑、細長い畑、また耕作放棄地など様々。そんな畑の一つである。これからの収穫を待つ玉葱畑を見つめる馬場さんの目と言葉はなんとも力の抜けた自然体だった。
「信念はあまりない。もちろん基本はあるが、自分を崩さないわけではない、ダメなものはダメと認める、今日の正解が明日の正解ではないと考えている。天草育組でも100%自分の話を信用してと言っているわけではない。あとはちゃんと自分で考えて欲しいし、ぼくの方法論は全てオープンにしているので、ぜひ多くの方に挑戦してほしいと思っている。」

馬場さんの玉葱畑写真2

天草とイチジク

天草の海岸沿いの道にはイチジクが自生している。

イチジクはキリスト教と共に日本へ入ってきて、最初に栽培されたのが天草であるというのが最近の研究でわかってきた。日本に訪れた宣教師の手紙のやり取り等で実証されてきているという。

「そういった、土地のもっている歴史も踏まえて、今はイチジクを増産中です!」
と馬場さんは嬉しそうに語っていた。

馬場さんオススメの<天草オクラ>、<春日ぼうぶら>や<イチジク>も引き続き誌面でご紹介していく予定。次の旬野菜たちを楽しみに待とう。

Writer : YASUHARU MOTOMIYA / Photographer : SATOSHI TACHIBANA

天草育組

URL https://ja-jp.facebook.com/amakusahagukumi
住所 〒863-2421 熊本県天草市五和町二江3128-2
食育指導士 馬場照昭

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