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THE POWER OF SHUN(December 2015)

SHUN STYLE

「味噌」を知り、「地域」を知る

味噌写真

古くから日本に伝わる味噌は日本人にとっては馴染みの深い存在である。現在では主に、「調味料」として使われているが、食べ物が豊富にあるとはいえなかった時代では、重要なたんぱく源とされていた。また、「味噌は医者いらず」と言われるように、たんぱく質だけでなく、発酵させることで生成されるアミノ酸、ビタミン類も豊富。味噌は栄養食としても優れており、健康という観点からも日本国内だけではなく、世界からも注目を浴びているのである。

地域で育まれる味噌文化

味噌のように穀物を発酵させて作る調味料は中国の豆板醤や韓国のコチュジャンなど、他にも存在するが、麹菌と大豆で作る味噌は日本独自のものである。

味噌は使用する麹の種類によって以下の3つに分けられる。
①米麹を使った「米味噌」
②麦麹を使った「麦味噌」
③大豆自体を麹にした「豆味噌」

こうした麹によって分けられる味噌だが、麹の配分やそれぞれの地域の風土、さらにはとれる食物により味も色も千差万別な味噌が各地で作られている。
厳しい気候を乗り越えるために飢餓対策の一つとしてつくられていた東北の味噌は赤色辛口味噌。関西地方では米麹の割合が高い甘口の米白味噌、東北関西との交流がさかんだった北陸地方ではその両方の特徴を持った淡色の辛口米味噌。東海地方では八丁味噌といわれる独特の旨みがある米味噌など、日本にはそれぞれの地域文化を反映した多彩な味噌が存在する。

地域に根差した味噌文化を探ろうと、我々は山梨県甲府市で「甲州味噌」の製造販売を行う創業明治元年(1868年)の老舗店舗、五味醤油を訪れた。甲州味噌とは米麹と麦麹を合わせて作る甲州が生んだ味噌。甲州は盆地が狭く、さらには斜面が多い地域が大半で、思うように米が収穫できなかった。その対策として行われていたのが麦の栽培であった。このような地域性のなか、味噌を作るのに不足している米に麦を合わせて生まれたのが甲州味噌である。

地域の知恵が生んだ甲州味噌は2種類の麹が合わさったことで生まれるまろやかなコクが特徴。山梨名物の「ほうとう」などのように様々な食材を使った煮込み料理やサバの味噌煮などに使用すると、食材の魅力をより引き立ててくれる。

五味醤油の六代目、五味仁さんに話を伺った。
「コンビニやスーパーで全国同じものが画一的に売られている現在にあっても、味噌はその土地ごとのカラーが出る面白い食材です。米と小麦を合わせて作る山梨の郷土料理の『ほうとう』に甲州味噌がぴったり合うのも地域性が出ていて面白いですよね。昔は社名の通り、醤油も製造・販売をしていたのですが、醤油の味を統一するためのルールであるJAS規格が出来てしまってからは醤油事業からは撤退して、味噌一筋です。うちの味噌は地元のほうとう屋さん、うどん屋さんなどの飲食店にも使ってもらっています。地元のお店で好評を得るのは嬉しいですね。販売は工場に隣接しているお店の他では道の駅、オンラインショップ、また東京のライフスタイルショップなどで取り扱ってもらっています」。

味噌作業写真

ほうとう写真

五味さん写真

地域文化を伝える使命

「古くは武田信玄が味噌作りを推奨していたこともあって、この土地では自宅で味噌を作る文化が根強く残っています。地域に根差したモノ作りを行っていると、全国から大豆や麹の材料の提供だけでなく、味噌作りの道具のレンタルをしてほしい、実際に作っているところを見せてほしいという要望を多くいただきます。そういった要望をいただくことで、次第に“地元に残る味噌づくりの文化を伝えて行きたい”という地域文化を伝える使命が僕の中に芽生えました。今では製造だけでなく、2年程前に、東京で働いていた妹にも戻って来てもらって、年間40?50回、味噌作りのワークショップの講師をさせてもらっています」。

五味さんは妹の洋子さんと「発酵兄妹」というコンビを組んで、味噌づくりの魅力を発信している。手前味噌(手作りした味噌のこと)作りを紹介したアニメや絵本を制作して発信するなど、その活動は多岐にわたる。

「味噌の魅力は出汁をとって、調理をしてもらって初めて活きるものだから、消費者と交流して良さを知ってもらうことが大切なんですよね。まずは『味噌って美味しいんだ!』『簡単に作れるものなんだ!』と、味噌に親しみを感じてもらうことからはじめています」。と語る洋子さん。

「自信を持っておすすめできる物しか売りたくないので、味はもちろんパッケージデザインにもこだわっています。自分たちが売っていてテンションがあがるものしか、うちでは販売していません。各家庭でつくった手前味噌も、美味しいけれど、五味醤油の味噌も美味しいよね!と言ってもらえるのが理想の形ですね」。

“当たり前”のように日本の食卓に並ぶ味噌を使った料理たち。その“当たり前”を知ることによって、私たちは地域が育んできた新たな美味しさに巡り合うことができる。

五味さん兄妹写真

てまえみそ写真

五味醤油

住所 山梨県甲府市城東1-15-10
*JR身延線金手駅徒歩約5分
TEL 055-233-3661
営業時間 9:00-18:00
定休日 日曜日
URL http://yamagomiso.com/
    • 五味醤油写真
    • 五味醤油店内写真