「秋野菜 れんこん」

れんこん写真
東京築地にある、こだわりの青果店「築地御厨」店主の内田悟さんに、旬野菜の魅力をそれぞれの季節ごとに語っていただく「目利きが語る旬」シリーズ。第2回は秋野菜のれんこんをご紹介いただく。れんこんの基礎知識から目利き方法、そして旬を迎えたれんこんのおいしい調理方法まで、れんこんの魅力をたっぷりと語ってもらった。

れんこんの穴の秘密

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れんこんは、ハスの地下茎が肥大したもので、泥沢地で育つ。
英語名は「ロータス」と言い、「8つ」という意味をもつ。その名の通り、れんこんは穴の数が8?9つほどあるものが自然に育った証。その穴の役割は「水の通り道」であり、真ん中に1つある小さい穴は呼吸をするためにある。なんともユニークなフォルムだ。れんこんは泥の中にもぐって生育しているため、地上に咲くハスの実は、空気を取り込むアンテナ役として地下とつながっている。
原産地は、中国、エジプトなど諸説あるが、元々日本にあったもので“備中れんこん”という古来種のものもあり、生産量は限定的だ。
「れんこんは、穴からのぞくと向こう側が見えることから見通しがいいとも言われ、縁起をかつぐ立役者として、おせち料理やお祝いごとに登場する役目を担うことも多いんだよ」と内田さん。

れんこんの目利き術!おいしいれんこんを選ぶには

内田さん写真

れんこんは成長順に、親・子・孫と連なってできる。その節ごとに大きさ、味わいも違うため、連なりがそのままのれんこんを選びたい。内田さんの目利きポイントは以下の2つ。

・全体がふっくらとしていて丸みがある
・周囲に8つの穴がほぼ均一に並ぶ(健やかに育った証拠)

旬に息づく野菜は、自然の原理に沿って育っているため、姿形に共通点があると、内田さん。全ての野菜に当てはまるという「野菜の目利き8箇条」も改めて紹介しておこう。

内田流やさいの見かた8か条

  • 1.[形]まるいやさいを選ぼう
  • 2.[大きさ]大きすぎない。だけど、ずっしり重いものを選ぼう
  • 3.[色]緑色が淡いものを選ぼう
  • 4.[バランス]形や葉脈が左右均等で美しいものを選ぼう
  • 5.[軸]軸が小さめでまん中にあるものを選ぼう
  • 6.[ひげ根]ひげ根の跡がまっすぐに並んでいるものを選ぼう
  • 7.[芽・子室]次世代につながる生命力のしるし=根・芽・子室の数を確認しよう
  • 8.腐るやさいではなく、枯れるやさいを選ぼう

「走り」「盛り」「名残」それぞれを楽しむ、れんこん料理

内田さん写真

「旬」は、もっとも生命力に溢れた味をいただける季節。
れんこんは、秋(9月~11月)がその時期にあたるが、その中でも「走り」「盛り」「名残」に分かれ、それぞれの特徴を活かす切り方、火の入れ方など調理法が異なる。

走り―
まだまだ成長途上。みずみずしく、繊維も細くてやわらかいため、水分を一気にとりのぞく調理法が向く。縦に切ってきんぴらに!甘酢に漬けた「酢ばす」もおススメ。シャキシャキした食感を愉しむ。
盛り―
どんな調理法を用いてもOKだが、れんこんの特徴的な形をいかした、見た目も映えるれんこんチップスが特におすすめ。調理工程もとてもシンプル。サラダのトッピングにすれば、カリっとした食感が加わりいいアクセントに。レシピも掲載しておくので是非、家庭でもチャレンジして頂きたい。
名残―
皮が張り、繊維も太くなるため、じっくり火を入れるような調理法がおススメ。
輪切りにして天ぷら、からしを効かせたマッシュポテトをはさんだフライは内田さんオリジナルのお気に入りレシピ。乱切りにして煮物にも。ほっくりとした食感を愉しむ。
盛りのレンコンチップスと、にんじんドレッシング

★ おすすめレシピ

「盛りのレンコンチップスと、にんじんドレッシング」

ポイントは揚げる前に下ゆでし、しっかりと水気を切ったあと、低温でじっくりゆっくり揚げること。同じく旬を迎えたほどよい苦味のある春菊に、すりおろしたにんじんで作ったドレッシングを和え、れんこんチップスを添えたサラダのその絶妙な相性、深い味わいはため息がでるほど。3つの秋野菜がお互いを引き立て合い、完璧な調和をなす。ワインとの相性も抜群だ。

子どもも喜ぶ、れんこんのおやつ

れんこんチップス写真

素材ひとつで簡単に、そのものの持つ味わいをたのしめる「れんこんチップス」。おつまみにも最適で、どんどんお酒がすすみそうだが、もちろんおやつにもぴったり。「子どもにこういうものをお母さんが作ってあげるといいね。」と内田さん。

「おかあさん、これなあに?」
「これはね、れんこんって言うんだよ。見てごらんなさい。水の通り道が8つあるんだよ。」

素材ひとつで簡単に、そのものの持つ味わいをたのしめる「れんこんチップス」。おつまみにも最適で、どんどんお酒がすすみそうだが、もちろんおやつにもぴったり。「子どもにこういうものをお母さんが作ってあげるといいね。」と内田さん。旬の野菜を通して、このような会話がうまれること。微笑ましく愛しい光景を想像すると頬が緩む。そんなささやかな日常のひとコマが少しずつ増えていくことで、カラダも心も豊かに穏やかに育っていくにちがいない

プロフィール

築地御厨店舗外観写真
内田悟(築地御厨 つきじみくりや 店主)
フランス料理店で修行中に野菜への関心を深め、26歳より青果納品業に勤務。その後、築地場内で有機無農薬野菜を販売。2005年、東京中央区にレストラン専門青果店「築地御厨」を創業。2007年より本業のかたわら消費者向けに無料の「やさい塾」を開講し、安全安心な野菜の選び方や扱い方を独自の視点で伝える。TVや雑誌などでも活躍中。
URL http://www.yasaijyuku.com/
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