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E-ZEY

茶師十段が手塩にかけて創りだす"匠の抹茶"

―京都府

(取材月:February 2016)

京都府南部地域で育まれる「宇治抹茶」。抹茶とは緑茶の一種であり、茶道で使われる茶として、日本の伝統文化とも深い関わりを持つものだ。
そもそも「茶」は、奈良・平安時代に中国・唐で修業をしていた修行僧が、眠気覚ましや気付け薬として嗜んでいたものを日本に持ち帰ったのが始まりといわれている。それ以降、京都では時の権力者が茶づくりを保護したこともあり、今もなお良質な茶(宇治抹茶)が作り続けられている。

そしていまでは、抹茶はお菓子の素材としても使われ、その味わいは日本人だけでなく、世界の人からも愛されている。
今回は茶の一大産地で抹茶の魅力をもっと多くのカタチにして届けたいという想いから、「千慶の白」という抹茶づくりに挑戦している一人の茶師を訪ねた。

茶師十段が創りあげる理想の抹茶

茶師とは「茶を創る」職人のこと。茶葉を審査、判別し、それぞれの個性を活かしながら合組(ごうぐみ:ブレンドの意)することで、表現したい茶の味を生み出す匠だ。茶師には茶の鑑識眼の技量を示す段位(茶審査技術)があり、その最高位となる十段に認定されたのは歴代でもたった13名のみ(2015年現在)。その最高位となる十段を持ち、創業180年以上になる宇治茶の老舗「放香堂」の六代目茶師・東 源兵衛を受け継いだのが、酢田恭行さんだ。

酢田さんは茶葉の選定や合組といったことだけでなく、茶畑の段階から茶の味づくりに取り組み、日々茶園を巡りながら、農家と一緒になって栽培方法を探っている。

「私はこの茶畑が全てだと思っています。茶畑から関わらないと、絶対に自分が思い描くような抹茶はつくれません。私たちは自社茶園や管理茶園を持っているので、ブレンドや鑑定をしながら茶畑づくりもする。それが私の思う“茶を創る”ということなんです」。

同じ地域にある茶畑でも、品種や気候、土壌によってその個性は全く異なる。酢田さんは茶を栽培することを、“人間を育てるのと同じようなもの”と表現する。

「毎日茶畑に通っていると茶の木の機嫌の良し悪しがわかってくるんです。たとえば茶の木が元気がない時は、布団をかけるように根っこに敷き草を敷いてやる。肥料も、元気のない時に人間がステーキを食べられないのと同じように、茶の木が欲しいタイミングで肥料を与えてあげる。それは先人が教えてくれたことであり、経験によって培われた感覚でわかるようになります。陽気で明るく手のかからない茶畑もあれば、放っておくとすぐに拗ねてしまう茶畑もあったりと個性も豊か。茶畑は毎日見ていても飽きないですね」。

手塩にかけて育てた茶の葉の“旬”は2、3日。短い時はわずか1日のみと一瞬。酢田さんはその瞬間を逃さず摘み取るため、4 月後半?5 月末の収穫期前後は片時も茶畑から離れないという。また、酢田さんは茶師としての繊細な味覚や嗅覚を守るため、酒やタバコはもちろん、唐辛子やワサビなどの刺激物を一切摂らないという徹底ぶり。酢田さんの行動や言葉の全てから、茶への深い愛を感じた。

酢田さん写真

お茶写真

  • 茶畑写真
  • 酢田さん写真

茶師十段が挑む「千慶の白」

茶は“茶の木”と呼ばれる木の一種であることから、山間部である京都府南部の土壌はその生育に適しているという。寒暖の差が大きい気候と豊富な木津川の水源も、古くからここで茶づくりが浸透してきた所以だ。山肌に波を描くように広がる茶畑の光景は、壮大でとても美しい。

抹茶の原料となる茶葉の"てん茶"は、茶園をヨシズやワラなどで覆い、日光を遮って育てられる。収穫後はすぐに加工工場へと運ばれ、蒸してから「てん茶炉」と呼ばれる機械で熱を与えながら乾燥し、茎や葉脈を取り除く。そうして出来上がったてん茶を挽いたものが、抹茶となる。

いま酢田さんが取り組んでいるのが、菓子などの素材として使う抹茶「千慶の白」の開発だ。

茶畑写真

抹茶を素材として使用する場合、「旨味・色味・ 苦味」 といった“抹茶の味わい”に欠かせない要素を引き出すことが大切となる。しかし、点てて飲む抹茶と違って、加工用として使われる抹茶は、その要素を引き出すことは難しくなると酢田さんはいう。そこで考えたのが、茶畑も品種も異なる三つの抹茶をブレンドすること。実際に、それぞれの茶葉が育つ畑を見せてもらうことができた。

一つ目は、相楽郡和束町で育てられる「さきみどり」という品種。 茶園を“棚”と呼ばれるもので覆いをして、茶葉に当たる光を遮り調整することによって旨味のある茶葉に仕上げていく。二つ目は、標高450m の場所にある南山城村・童仙房の「やぶきた」種。平地部に比べ4、5℃ほど低い冷涼な気候に負けないようにと茶葉が厚みを増し、ほろ苦い味わいを醸し出す。同じく南山城村・田山地区にある三つ目の茶畑では、 鮮やかな緑色と大きな葉を持つ「さみどり」を栽培。

これら三つの茶葉をブレンドすることで、「旨味・色味・苦味」といった抹茶特有の味わいを引き出すことのできる加工に適した抹茶「千慶の白」が完成する。こうした茶師十段としての確かな鑑識眼と、日々茶畑と向き合う酢田さんのこだわりがあって「千慶の白」は創られているのだ。

茶葉写真

後世に残したい、茶のある風景

「茶を美味しく飲める場所がある」と酢田さんが連れて来てくれたのは、南山城村の童仙房(どうせんぼう)にある陶芸家・清水善行さんの家。築80 年になる日本家屋の中には、こたつのある和室があり、格子窓その外には茶畑が広がっている。

“急須で茶を飲む”ということを文化としてずっと残したい。
そう思っている酢田さんは日本各地で茶器を作ってくれる陶芸家さんを探すうちに、清水さんに出会ったのだそう。地元の土で作る器を始め、味のある清水さんの作品と人柄に心奪われたのだという。

清水さんが煎ってくれた香ばしいほうじ茶をいただきながら、酢田さんは茶師としての願いを語ってくれた。
「童仙房にきた時にはいつもここに寄り道するんです。こういう空間に来ると、急須で茶を入れてお話したくなるでしょう。この“団らん”こそが、日本の茶文化と思っています。茶師の技術うんぬんよりも、こうした風景をもっとみなさんに伝えていきたいです」。

酢田さんと清水さん写真

「千慶」に込められた想い

今回、「E-ZEY JAPAN」では茶師十段の酢田さんが開発した「千慶の白」を使用した商品を開発。

「普通の抹茶をケーキやプリンといったお菓子と一緒にすると、旨味や苦味が弱くなってしまう課題があります。『千慶の白』は他の食材とも相性が良く、抹茶特有の味わいを感じることができる抹茶に仕上げています」と酢田さんは話す。

「『千慶(千の慶び)』の名の通り、多くの人に抹茶の魅力に触れてもらい、喜びを感じてもらいたい」という酢田さん。茶師十段が手塩にかけて育てる抹茶、その想いを味わってみてほしい。

千慶の白写真

京都府南部「宇治抹茶」
情報提供:放香堂 酢田恭行さん

ふかうら雪人参

“旬”の季節
抹茶は新茶の季節である4 月上旬?5 月上旬よりも、ひと夏寝かせた(熟成させた)もののほうが美味。茶の世界では寝かせる(熟成させる)ことを「枯れさせる」という。

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株式会社放香堂

住所 兵庫県神戸市中央区元町通り3丁目10-6
TEL 0120-088-450
URL http://www.hokodo.co.jp/

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